代替療法、民間療法・・・胡散臭いと感じる方も多いでしょう。でも、長い歴史を経て受け継がれてきたものであるなら,科学で証明されないから迷信だなどと片付けてはいけない!むしろ、科学が未だ証明できるレベルに達していない!と考えるべきではないかとさえ、私個人は思ってしまうのです。
そこで、この分野の第一人者、翻訳家であり、鍼灸師、日本ホリスティック医学協会副会長でいらっしゃる上野圭一さんにスタジオから電話取材をさせていただきました。

電話を通じて届く上野圭一さんの声は静かで優しく、流れる時間さえも包み込んでいくようです。

先ず、日本における伝統医療、民間療法など代替療法の流れについて伺いました。
二千年も三千年も続いてきた代替療法は、明治政府が日本国の医療を西洋医学と定めて以来、禁止の憂き目にあいました。戦後、辛うじて残っていた鍼灸でさえ、目の不自由な方々を除いて禁止されてしまいます。マッカーサーが、人の体に鍼を刺すなんて野蛮だと言ったという理由で・・・。
にも拘らず、代替療法の火が完全に消えることはなかったのです!人間に必要のないものであれば、これほどまでに受け継がれなかったでしょう。しかし、やはりこの間に、日本の代替医療や統合医療への取り組みは遅れてしまいました。

どうやら、欧米の医療の現場では、西洋医学と同じ様に、代替医療が患者の選択肢の中に当然の如く用意されているようです。具体的に、アメリカの例を挙げて、上野圭一さんはご紹介くださいました。
アメリカでは、代替療法の専門の電話帳が、東京のイエローページほどの厚みをしているのだそうです。また、病院のライブラリーでは代替療法についての情報を取り揃えていて、自由に患者がアクセスすることができるし、医師が紹介することも珍しくないのだそうです。
その点、日本では、厚生労働省がガイドを作っていないし、一部の僅かな大学病院で統合医療についての取り組みが始まった程度。一般の人は、受けることが出来ないのが現状です。

では、何故、欧米では西洋医学一辺倒ではないのでしょうか?上野圭一さんの答えは、とても簡単でした。
先ず、ストレス疾患・精神疾患・生活習慣病・ガンなどの西洋医学が不得意とする病気の解決法は、解決法が色々合った方が良いに決まっています。そして、コストが掛からない!大きな機械を使わず、自然の人間の持つ治る力を呼び起こし、後押しするのが代替療法ですから、医療費は安くすむのです。世界中が医療費の問題を抱えていて、これについても日本は既に出遅れているといえますね。

さて、上野圭一さんの著書に、『代替医療ナビ』(筑摩書房)というのがあります。様々な療法が、いくつかの施設などと共に紹介されているガイドブックです。この中から、何が自分に合うのかを見つけるにはどうすればいいのでしょうか?もちろん聞いてみました。
インターネットや入門書で情報を得たら、気分を落ち着けて直感を働かせてみてください。自分の直感は、とても大事です。この方法なら私も治るかもしれないと感じたら、冷やかし半分でいいですから尋ねてみましょう。
でも、いかにも儲かっているような煌びやかな治療院は疑ってかかって下さい。小さくて古いけど、清潔で清清しい!そんなところがお薦めです。真面目に代替医療に人生を捧げていれば、儲かる筈がないのです。

うふふ・・・つい笑ってしまう上野圭一さんの本音でしたが、現在、静岡県伊東市にお住まいです。自ら畑で農作物を育て、方や、アンドルーワイル博士の指名により、日本語版の博士の著書全てを翻訳。もちろん、鍼灸師の仕事、代替医療発展の為の活動もあるわけです。
我々がスタジオから電話を入れたとき、約束の時間を過ぎても留守番電話が応答するばかり・・・。お忙しいに違いないから、もう少し待ってみようなんてディレクターと話していたら、ご本人から連絡が!!「いやぁ、ごめんなさい。すっかり忘れて畑で夢中になって作業してました。今、全身泥だらけで受話器を持ってます。」

アンドルーワイル博士といえば、タイム誌の「アメリカで最も影響力のある25人」の中でたった一人医師として選ばれたこともあるという、統合医療の提唱者なのだそうです。博士の著書「ワイル博士の医食同源」(角川書店)「癒す心、治る力」(角川文庫)も、もちろん上野圭一さんの翻訳。
そんな偉い博士が翻訳を任せる凄い人が、電話の向こうで泥だらけだったなんて!!!!なんと私は素敵な時間を頂いたのでしょう!!

 


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